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第060話 二回目(?)の出立①

Author: 柳アトム
last update publish date: 2026-09-12 04:10:09

 父は家から僕を送り出し、僕が自衛隊が用意した軍用車両に乗り込む前に、僕を強く抱きしめた。

 身長二メートル十五センチ。体重百五十キロ。学生時代は相撲部の主将として鳴らした父に、そのように愛情を表現されると僕の背骨はいとも簡単にへし折れそうになる。

「気をつけて行ってくるんだぞ、傑まさる」

「ゔ、ゔん、わ、わがっだよ、父さん……」

 危うく気を失いそうになりつつも、辛うじて僕は父に返事をする。

 次に父は母を全力で抱きしめ、情熱的な接吻を交わす。

 小柄な母は、父に覆い隠されそうなほど強く抱きしめられたが、父に圧し潰されることはなく、逆に嘘か本当か分からないが北米の灰色ぐまグリズリーを素手で殴り飛ばしたと噂される膂力りょりょくで、父に抱き付き返し、父を押し返すのではないかと思える程の強さで、負けじと父の唇に自らの唇を押し当て続けた。

「まったく……。子どもの前ではやめてくれって、いつも言っているのに……」

 そう溜息をつきつつ、僕は軍用車両を振り返る。

「おお。すごい。これって自衛隊の最新車両じゃん。さすが僕たち全世界の十六歳の若者が、《天使セラフィム》
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     次々とこの場から車が逃げ出し、その数をみるみる減らしていった。  どうやら僕と軍毅、それに詩華は、他の「戦友」に比べ、車の発見が遅かったようだ。「急げッ! あの車だッ!」 それでも軍毅は残った車に乗り込もうと躍起になるが、その度に、目の前で別の戦友に車を奪われ、なかなか車を獲得する事ができずにいた。 そうしている間にも車は、みるみる戦友に奪われ、数を減らしていく。「くそッ……! このままじゃ……ッ!」 軍機が焦る。「どこかに……、どこかに車は残っていないの……」 詩華は急速に数を減らす車を成す術もなく見送るしかできずにいた。  せっかく多くの車を見つけ、脱出の糸口を見つけたと思った直後だっただけに、落胆も大きいようだった。 しかし、そんな二人に比べて、僕は余裕があった。  何故なら───。 僕は「ある場所」をライトで照らす。  そこは、雑草が生い茂り、茂みになっている場所だった。  そしてそこには僕の「目当ての物」があった。「やっぱり今回の《天使》の《審判》でも、ここにあってくれたんだね」 茂みの中にあったもの。  それは一見すると車とは思えないガラクタの山のようだったが、よく見ると古びた小型のトラックだった。「前回の《天使》の《審判》で僕が乗り込んだトラック。嬉しいな。まるで長い付き合いの相棒に再会したようだよ」 僕は、僕の相棒だったトラックが、今回も前回同様、茂みの中にあってくれて喜んだ。「軍毅、それに詩華。あそこにまだトラックがあるよ。あのトラックに乗り込もう」 僕は軍毅と詩華を誘う。  前回の《天使》の《審判》で、僕は軍毅に四人パーティーモードに誘われたが、その申し出を断り、単独挑戦モードを選んだ。  しかし、今回はそうするつもりはなかった。  その理由は、まず、《天使》の《審判》ではゴール地点にドラゴンがいて、最低でも十六人の戦友がいないと、そのドラゴンを倒せず、最初のゴール地点に到達することができない。その為、仲間が多い方が良いという事を僕が学んでいたからというのが一点目の理由。  もう一点の理由は、僕は別世界の事ではあるが、詩華に異世界で

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  • フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する   第075話 二回目の異世界へ⑦

     「《穴》」に全身を蝕まれた僕は暗闇の中にいるようだった。  どうしてこんな所にいるのかはわからない。  でも、不意に目の前に最愛の妹・虹心が現れる。『虹心ッ!』 僕は喜び、そして叫ぶ。  会いたくて会いたくて仕方がなかった妹がまた目の前にいるんだ。  こんな状況になれば、誰だって叫ぶよね。 僕は駆け出し、妹に手を伸ばす。 しかし───。『お、お兄ちゃんッ……!』『虹心ッ!』 僕の目の前で妹が「《穴》」に蝕まれる。『助けてッ! お兄ちゃんッ! 私が消えちゃうッ!』 妹は目に涙を浮かべ、助けを求めて僕に手を伸ばす。『そうはさせないッ! 僕の手を掴むんだ、虹心ッ!』 その手を掴もうと、僕も手を伸ばす。  しかし、僕の伸ばした手が妹を掴む間もなく、虹心は「《穴》」に掻き消されてしまった。 僕は失った妹を探して、必死に暗闇をまさぐる。  しかし、その手は虚しく空を掴むばかりだった。『どうして虹心がッ! 僕の妹がこんな目にッ!』 怒りと喪失感で半狂乱となった僕は、腕を振り回して暗闇を掻きむしる。『うわッ! な、なんだこれはッ!?』 僕は自分の異変に気づく。  それは僕の身体にも「《穴》」が現れ、広がっていくという異変だった。『うわーッ!』 さらに僕は自分の足元にあった床がなくなり、崩落するように落下する浮遊感を覚える。「傑くん! しっかりして! 傑くん!」 誰かが僕を呼んでいる。  同時に僕は大きく身体を揺すられる。  尚も暗闇を落下し続ける僕は、不意に全身を草地の地面に受け止められる。  ドスンという衝撃が全身に響いた。  驚いた僕は目を見開いて叫んだ。「うわーッ!」「大丈夫よ、

  • フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する   第074話 二回目の異世界へ⑥

    「終わりましたか?」 一方の《天使》が、もう一方の《天使》に尋ねる。「完了した。十六歳の若者全員と、この場にいることがふさわしくない者を消し去った」「消し去った……。彼らはこの世から消えてなくなってしまったのでしょうか?」「この世から消えてなくなったという点では正しい。だが、死んだわけではない。転移の方法は違うが、彼らは異世界に旅立った。それだけだ」「そうですか。異世界に旅立ちましたか。しかし、この「《穴》」による転移方法だと、彼らにルールを科せる事ができません。具体的には、異世界に転移して、最初の一日だけはモンスターに襲われないように「初心者保護期間」を儲けていましたが、その恩恵を彼らは受けることができなくなってしまいました」「それであれば、彼らが異世界で生き残り、最初のゴールですら辿り着くことは難しいかもしれないな」「ええ。恐らくそうなるでしょう。たった一人でさえ生き残れるかどうか」「そうだな。それ程までに異世界は、この世界の者にとっては生き残ることが過酷な環境だ」 二柱の《天使》は、異世界に転移した者たちが生き残れないことを残念に思い、溜息をついたように思えた。  しかし、それはあくまで思えただけで、実際には、《天使》は微動だにせず、ただその場に神々しく在り続けるだけだったが。「しかし、希望はありそうですね」「そうだな。希望はありそうだ」「この世界には数多の多次元宇宙───つまり並行世界があります」「そう。人々が日々の行動で一つの選択をする度に、選んだ選択の世界と、選ばなかった選択の世界が誕生し、二つの世界は別々の道を歩み始める」「我々のようにあらゆる選択肢と、あらゆる未来を「共有」して今を生きられない人類にとって、人生とはたった一度の冒険で、やり直したり、別の世界の自分と入れ替わることはできない」「ですが「修復者」は違う。修復者は、選択によって分裂し、別々の未来を歩み始めた二つの世界」を、また一つの世界に「修復」することができる」「選択を迫られた際、選択を選んだ世界と、選ばなかった世界を同時に生きることができる者……」「しかも、選択は一つ二つではない。一人の人間が、日々、何百、何千と選択している」「その選択の数だけ世界が誕生し、分裂して別々

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